【3.11談話】東日本大震災から8年 長期化する福島の復興を進めるために行うべきこと ~ ふくしま連携復興センター談話 ~
2019年3月11日で、東日本大震災(以下、震災)の発生から8年が経過した。
震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下、原発事故)発生以降、国や自治体、民間企業、専門機関、またNPOやボランティアなどにより様々な復興支援の取り組みが行われてきた。
これまでに、相次ぐ避難指示の解除やインフラの復旧、除染などについては着実に進展を見せてきた。企業や先端産業の誘致、医療・商業施設の建設など、県内の復興は着実に進んでいるとの報道も目立っている。
一方、個々の被災者の生活再建に目を移すと、生活困窮や孤立、うつ、アルコール依存症に陥るなど深刻な問題が進んでいるケースも少なくない。また、避難指示解除区域における帰還率は低迷し、コミュニティの分散や住民の孤立、帰還する住民と避難先にとどまる住民の軋轢など、新たな問題の発生もみられる。さらに避難指示の解除に伴う支援の縮小や東京電力の賠償の打ち切りなどが被災者の生活再建を阻む要因となっている。
こうした中、国が定める復興創生期間が終了し復興庁の設置期限まで残すところあと2年余りとなり、行政の支援施策も今後縮小傾向に向かうことが予想される。しかし、福島における復興課題は未だ山積しており、今後も益々困難を極めていくことが予想される。加えて東京電力・福島第一原子力発電所の廃炉作業期間や、県内の除染による放射性廃棄物の保管期間が30年間と定められている中間貯蔵施設の設置が長期にわたることもあり「震災発生から10年」では課題は解決されないのは明白である。長期的な視点のもとで復興支援のあり方を検討し、支援体制の構築・維持、人材や資金等活動に必要な資源の確保などへの対応が求められる。
そこで、ふくしま連携復興センターはポスト復興創生期間を見据え、今年度を出発点として以下の活動を実施していく。
1. 長期的視点による「復興支援のあり方」の模索
ポスト復興創生期間を見据えた復興支援のあり方を探り、民間セクターが担うべき役割について整理する。ふくしま連携復興センターの会員団体をはじめとした民間の復興の担い手とともに、行政や社協等の専門機関など様々な主体を加えて多角的な視点から「震災発生10年目以降」も復興を担っていくために必要な組織や実施すべき活動などを検討し、グランドデザインを描き復興支援活動の継続を図る。
この「復興支援のあり方」を模索していくために、民間の支援団体が震災と原発事故以来行ってきた取り組みを振り返り、その影響や効果についての検証を行っていく。民間の支援団体は被災地や被災者にどのように向き合い、そして復興のためにどのように取り組んできたのか、これまで人類が経験したことが無い未曽有の災害に対し、不可欠だったものは何か、今後どのような取り組みが求められるのかを協議していく上での重要な知見を得ることを目指す。
2. 活動資金の確保
震災と原発事故の発生から時間が経過するにつれて、復興への取り組みを継続していくための活動資金を確保していくのが困難になりつつある。民間の助成金プログラムの終了が相次ぎ、また復興庁の設置期限を迎えるとともに、行政が行う復興事業の規模が縮小していくことも予想される。取り組みを継続していくために、必要な資金をどのように確保するかが今後の課題となっている。
こうした中、昨年度ふくしま連携復興センターは「ふくしま百年基金」の設立準備を行ってきた。そして昨年4月には「一般財団法人ふくしま百年基金」が誕生した。今後はふくしま百年基金が目指す「市民が市民を支える仕組み」の構築を支援し、復興や地域再生に必要な資金を継続的に確保できるような体制を整えていく。
3.福島の復興への取り組みやそこから生まれた仕組みの伝承
福島県は、地震や津波による自然災害に加え、未曽有の原子力災害やそこから発生する風評といった複合的な被害に見舞われている。福島県で行われている復興への取り組みは、これも人類が経験したことのない課題にチャレンジし、様々なノウハウや仕組みを作り上げているといっても過言ではない。こうした活動は、近い将来の発生が予測されている大規模災害や、そこからの被災者の生活再建課題などへの対応にも必ず役に立つものと思われる。
例えば、県外避難者支援の事業によって構築した全国26か所の生活再建支援拠点の設置とその管理・運営の仕組みは、広域避難が想定される大規模災害でもそのノウハウを生かすことができると考える。また、同事業で現在進められた、被災者の個人情報の支援者間での共有は、これまで支援者間で情報が分断され、十分な対応ができなかった被災者支援を可能にする一つの事例ともなり得る。
こうした取り組みやそこから生まれた仕組みを伝承していくことにより、今後の日本における防災・減災のための備えとして役立てるとともに、復興活動への関心を再び取り戻すことで長期化に対応すべく体制の維持や、復興ステージごとに必要となるものが変遷していく社会資源の確保を図っていく。
未曽有の災害に見舞われた福島県の復興は、多様な課題に長期間向き合い、被災地・被災者に寄り添いながら丁寧に進めていかなければならない。合わせて、被災者や支援者など多くの関係者が思い描く、多岐にわたる復興ビジョンを実現するための仕組みづくりや体制構築・運営などが求められる。
震災と原発事故の発生から、多くの主体が市民活動やボランティア、企業の社会貢献など様々な取り組みを行い、一定の成果を上げてきた。この民間による復興支援活動はこれからも重要な役割を担うことが期待されている。一方、復興庁の設置期限があと2年に迫り、後継組織についての報道も目立ち始めてきている。行政の復興施策も大きく変化していくことが予想されるが、引き続き官民挙げての復興への取り組みが求められることは疑いの余地もない。ふくしま連携復興センターは、引き続きこうした多様な主体がそれぞれの持つ特性や長所を十分に生かして復興への取り組みを続けていけるように、中間支援としての役割を果たしていく。
加えて、こうした取り組みが災害大国といわれている日本における防災・減災に役立つように経験やノウハウの伝承に力をいれていく。国民が福島の復興に関心を持ち続け、支援者間での経験やノウハウが共有されることで、大規模災害が発生した際に被害を最小限度に収め、そして被災者の生活再建が少しでも早く進むことに繋がるはずである。そのためにもふくしま連携復興センターは、福島で復興支援に取り組む主体がこれからも困難に立ち向かい、被災地・被災者とともに思い描く復興ビジョンに一歩でも近づけるように努力していく。そして、「ふくしま」の経験を国内外に発信することも我々の重要な役割と位置づけ、今後も続けていく所存である。
2019年3月11日
一般社団法人 ふくしま連携復興センター
代表理事 天野和彦