• 実施報告
  • 2022.01.11

3県連携復興センター合同シンポジウム 「東日本大震災で育まれたレジリエンス~受け継がれるバトン」実施報告

 11月30日「東日本大震災で育まれたレジリエンス~受け継がれるバトン」と題して、被災3県の連携復興センター合同によるシンポジウムが執り行われました。
 「レジリエンス」という言葉は、まだ耳慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、甚大な被災から回復する為の対応力として、事例共有や災害対応力強化について議論し、未来の災害対応について考えるきっかけとそこからの学びや教訓を未来に受け継いで行く事を目的として開催致しました。
 全体会1、分科会。全体会2の3部立てて行われ、全体会1は、大阪市立大学大学院文学部研究科人間行動学専攻准教授;菅野拓様、NPO法人神戸まちづくり研究所理事長;野崎隆一様、東日本大震災全国支援ネットワーク(JCN)代表世話人;栗田暢之様にご登壇頂き、阪神・淡路大震災。中越大地震等、東日本大震災以前の災害に携わった方々が渡したかったバトンについて検討する場としました。
 分科会では、各県連携復興センター毎に企画し、被災3県からそのテーマに沿った団体に登壇をお願いし実施しました。
 いわて連携復興センターは「復興の課程とともに、NPOの活動と役割はどのように変化していくのか」をテーマに、岩手からNPO法人みやっこベース理事長;早川輝様、宮城からNPO法人石巻復興支援ネットワーク代表;兼子佳恵様、福島からいわき・双葉郡子育て応援コミュニティcotohana共同代表;小林奈保子様が登壇し、全体会からの流れで、大阪市立大学の菅野拓様がスーパーバイザーとして加わりました。
 みやぎ連携復興センターは「地域コミュニティ支援における一つの在り方~過去災害から見る地域コミュニティ支援の今後を探る~」をテーマに、岩手から岩手大学特任助教授;船戸義和様、宮城から認定NPO法人つながりデザインセンター副代表理事;新井信幸様、福島から東日本国際大学副学長;福迫昌之様。そしてスーパーバイザーとしてNPO法人神戸まちづくり研究所理事長;野崎隆一様が加わりました。
 そして我々、ふくしま連携復興センターでは、「震災復興過程におけるセクター間連携の変容と成果~社協とNPOの連携事例から~」をテーマに、岩手から社会福祉法人釜石市社会福祉協議会;菊池亮様、宮城から社会福祉士でファシリテーターの真壁さおり様、岩手からNPO法人ザ・ピープル理事長;吉田恵美子様。そして第一部登壇からのスーパーバイザーとして、東日本大震災全国ネットワーク(JCN)代表世話人、さらに全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)の代表理事でもある栗田暢之様が加わりました。
 その中で、菊池様は、東日本大震災前に災害ボランティアセンターの運営支援者研修を受けた時に一番強烈に残っている言葉、「社協の限界が、支援活動の限界であってはならない」というのが教訓として先達から受け継いだバトンであったとのこと。東日本大震災被災者支援では、「様々な課題がそれぞれのセクションにあり、連携することで何とかそれを解決出来るということを、身を持って体験してきた。その小さな経験、小さな成功を持ち寄って確かなものにしていった事実がある。その体験から、各々の団体のミッションを理解し、現状の生活の場で起きていることの情報共有をスムーズに行うことが大事であると悟った。」とのことでした。そして未来に渡したいバトンは、「連携の中でお互いに被災者の支援、被災地の復興を見立て、すり合わせていくことが必要だとわかった。多様な団体が各々強み、資源を持ち寄ってお互いに補完し合いながら被災者の生活再建の礎になるような取り組みをしていきたい。」とのお話をいただきました。
 次にNPO団体の立場からご登壇いただいた吉田様からは、「NPO法人ザ・ピープルはいわき市の小名浜(海岸の近いエリア)にあり、東日本大震災直後、被災者の生の声を聴きたい一心からいわき市の社協の傘下に入る形で災害ボランティアセンター運営を行い、サロン活動、イベント開催、ふくしまオーガニックコットンプロジェクト、フードバンク事業などNPOらしい様々な支援を展開したが、こういった支援活動には、社協との情報交換の場が大きく機能した。」とのお話がありました。
 そして未来に渡したいバトンは、「地域課題も多様化しており、災害もまた起きないという保証はない。そういった地域課題に向き合いつつ、次の災害に備えなければならない。一つの組織で出来ることは非常に小さいが、連携することで補い合えることはたくさんある。これから更に前に進むために次へのバトンを渡していきたい。」とのメッセージをいただきました。

 最後に真壁様には、中間支援組織のせんだい・みやぎNPOセンター、杜の伝言板ゆるる、宮城県社会福祉士会による宮城サポートセンター等の経験から、俯瞰した立場から県域、県外の連携についてお話いただきました。真壁様は「宮城サポートセンター」のスタッフとして、県域の仮設支援関係者の学びの場を創出し、共通認識作りのためのワークブック作成、被災当事者の雇用促進、支援者の学びの場の提供なども行いました。東日本大震災後の宮城県のセクター間連携において、「協議の場づくり」と「学びの場づくり」を各地で作っていくことを県の機関としてバックアップし、被災者一人一人の自己決定による生活再建を目指すことを目標に奔走されました。
 「一口に協働といっても簡単なものではない。時間もかかり、丁寧に説明しなければならないので、学びの場づくりを繰り返し行う必要がある。平時にも地域福祉の領域を超える視点で県域レベルでの中間支援的な役割が必要だという結論に達した。」とのことでした。さらに「復興というテーマをなくしても集まれる平時からの関係性を作っておいて、災害が起きた時にすぐ動けるような関係づくりを目指そうということで、宮城災害対応円卓会議(みやまる)を設置し、勉強会を行っている。」そうです。
 未来に渡したいバトンは、「期待しすぎず、でもあきらめない」ということだそうです。「残念ながら10年経って復興というテーマを掲げての協議の場が減り、学びの場自体も減ってきている。しかし、それらを重要だと考える人を増やして、平時から話し合いの場づくりと学びの場づくりを継続させていくことが出来るかということが一つの大きなテーマである。」とのことでした。
 全体会2では、それぞれの分科会に参加したスーパーバイザーの方々がさらに議論を重ねる場となりました。最後は栗田様から「震災時には些細なことでも助けてほしいと手を挙げられるように、助けたいという手ができるだけ多く挙げられる状況を作らなければならない。そしてその手と手をうまく繋いでいく必要がある。」とのお話をいただき閉幕となりました。

こうしたシンポジウムが、少しでも「いいみらい(1130)」を作るための良い機会になればと願っております。