• 【3.11談話】
  • 2022.03.10

【3.11談話】東日本大震災から11年

12年目の課題。これからの復興を進めるための視点
   ~ ふくしま連携復興センター談話 ~

■福島を取り巻く状況
 2022年3月11日で、東日本大震災(以下、震災)の発生から11年が経過する。昨年の3月11日は、10年目の節目ということで書店には震災関連コーナーが設けられる程多くの書籍が出版され、マスメディアでは多くの特集が組まれ、連日のように報道された。しかし、それを区切りとするかのように昨今は被災地や被災者に関する報道はめっきりと少なくなっている。原発事故の影響を受け続けている福島には多くの課題が残っていることについて、市民レベルで声を上げ続けなければ風化は着実に進んでいく懸念がある。
 また、昨年4月に福島第一原子力発電所の敷地内に貯まり続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出が閣議決定され、来春にも実施されることが報道されている。これにより風評被害が再燃すれば、ようやく復興の兆しが見えてきた漁業はもとより、農業や観光産業、ひいては被災地の生業再生に暗い影を落とすことになることは想像に難くない。金銭による解決ありきではなく、地元との対話を丁寧に重ねることで、生業の再生に尽力してきた人々の努力に敬意を払いながら解決を目指すことが望まれる。
 更に、環境の回復、新産業の創出等の創造的復興に不可欠な研究及び人材育成を目的とする「福島国際研究教育機構」を整備する法案が先日閣議決定された。研究内容などに地元の意見を反映させるとし、機構、県、市町村、既存の研究機関で協議会を作り、地元が関与できる機会が設けられた。この事が単なる箱物による復興ではなく、帰還者はもとより移住者も含めた相双地区の新たなまちづくりにつながる事を期待したい。

◯被災者支援の課題
 震災から10年以上が経過し、避難された方々の中には、時間の経過により世帯状況も変化し心身の健康を損ねたり、地域コミュニティから孤立するなど深刻な状況にある方が増えている。これは県内においても同様で、帰還しても孤立化により心の問題を抱え、それが生活困窮や自死に繋がってしまうケースも出ている。また、これまで民間セクター等が課題やニーズを拾い、支援に繋げてきたものが、被災者自らが手を上げ訴えなければ支援に繋がらなくなっており、支援を必要とする人がセーフティネットから漏れる懸念がある。こうした課題には、民間セクターが個別に対応するのではなく包括的なネットワークの構築と連携の強化が求められている。
 また、避難者の帰還が進まないことで、帰還促進から新に交流人口を呼び込む移住政策に軸足が移りつつある。しかし、県内外に避難している方々の住宅支援を打ち切られる一方で、移住者に様々な支援を施す施策は避難者の切り捨てと言わざるを得ない。

■ふくしま連携復興センターが取り組むこと
 震災から11年目となり、弊センターの第11期定時社員総会ではビジョン・ミッションを変更した。10年が経過したことで、これまでの活動を振り返り、弊センターが目指す福島の未来と取り組むべき事柄を見直すことが目的であり、「原発事故 子ども・被災者支援法※」の理念に基づいた支援を継続することを確認した。
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ふくしま連携復興センターが目指す福島の姿(ビジョン)
 ふくしま連携復興センターは、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故が投げかけた課題を教訓として、その課題解決に取り組む多様な主体が連携を深化させ、人口減少・経済格差・社会的孤立の拡大防止に取り組む「共に助け合う市民社会・ふくしま」を目指します。

ふくしま連携復興センターがやるべきこと(ミッション)
 1 世界史上初めての複合災害での被災者を一人も取り残すことの無いよう「原発事故 子ども・被災者支援
   法※」に基づく「留まる」「避難する」「戻る」の住民の自己決定を尊重した支援を継続します。
   【支援継続】
 2 東日本大震災への対応で得られた知見や教訓、被災実態の風化を防止するための情報発信を継続して行
   います。 【風化防止】
 3 人口減少、格差拡大に伴う地域社会の衰退に対し、市民協働の活動をさらに促進させます。 【社会課
   題】
 4 今後起こりうる大規模災害に対し、市民・行政の連携を深めることで防災・減災への備えを強化してい
   きます。 【災害対応】
 5 福島が抱える課題解決に取り組む市民活動団体等と、広範かつ積極的に連携を図り「共に助け合う市民
   社会・ふくしま」の構築に寄与します。 【市民社会】
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 「帰還困難区域」はその言葉通り将来にわたっても帰還することが出来ない場所と考えられ、2013年12月政府は避難者の避難先への定住を支援する方針を閣議決定した。しかし、時間の経過とともに放射線量が下がっていることから2016年になると避難指示区域を見直す方針が打ち出され、「帰還できる」環境づくりを進める方針に転換した。翌2017年には帰還困難区域の避難指示を解除して居住が可能となる特定復興再生拠点区域が創設され、2023年までの特定復興再生拠点区域全域の避難指示解除が計画されている。
 避難を余儀なくされた方々は、こうした政策転換に翻弄され続けている。一方で、避難元が2017年4月までに避難指示解除となった県内11市町村の避難者へ、全額または一部免除されていた医療・介護にかかる保険料や自己負担分の減免割合が段階的に縮小され、複数年かけて廃止する方針が示された。これは「原発事故 子ども・被災者支援法※」の理念にある「留まる・避難する・戻るの住民の自己決定を尊重した支援」がないがしろにされたかの様にも感じられる。いつまでも被災者・避難者として扱い続けることが難しいであろう事は理解できる。しかし、避難者が居住していた先から避難せざるを得なくなった原因はまちがいなく原発事故の放射能汚染による避難指示命令によるもので、避難した被災者が避難先で安心して生活ができたり、移住政策だけに偏らず避難者が帰還できるまちづくりを進めることが真の復興であると考える。
 ここにふくしま連携復興センターは、あらためて復興支援の継続を宣言する。また「原発事故 子ども・被災者支援法※」の理念に基づいた支援を継続し、「被災者の支援の必要性が継続する間、確実に実施されなければならない」が建前だけに終わらぬよう注視し続けていく。併せて震災教訓の風化防止、地域社会の衰退という社会課題への対応、防災・減災に向けた連携に取り組み、震災後から新たな福島のまちづくりに取り組み続けている人々とともに中間支援団体としてこれまで以上にその責務を自覚し、「共に助け合う市民社会」構築に寄与する所存である。

2022年3月11日
一般社団法人 ふくしま連携復興センター
代表理事 天野和彦

 

※「原発事故 子ども・被災者支援法」は、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(平成24年法律第48号)」の略称